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中華料理はその発祥地から北京、上海、四川、広東の4つに大別される。北京料理は餃子や麺といった小麦粉料理を中心に肉料理がメイン。上海料理は揚子江から上がる淡水魚を使う料理が多い。上海蟹やすっぽん料理が有名だ。広東料理はそれこそ何でもあり、比較的あっさりとした味付けながら、多種多様な食材を縦横に使い、興味深くもおいしい料理が作られる。 そして今回ご紹介する『龍の子』は四川料理を得意とする。四川省は長江の上流に位置し、重慶、成都の2大都市を抱える巨大な四川盆地がその中心だ。麻婆豆腐や坦々麺といった辛い料理が四川料理の特徴だ。「四川は盆地なので夏は蒸し暑い。冬は寒い。あまり太陽が照らない。だから発汗作用のある食べ物が好まれる」 安川氏は実質的に日本に四川料理を伝えたといわれる陳健民氏に師事した。料理の最後に油を回し入れるのを化粧油といったり、油通しのことを“風呂に入れる”といったのは陳健民さんが最初だったそうである。安川氏は四川料理のエキスパートとして広く知られており、生み出す料理は常に斬新だ。この1〜2年は“新派”と呼ばれる、新しいタイプの四川料理に力を入れているそうだ。 「香辛料に特徴があるんですね。たとえば豆板醤の元を油に漬け込んだ豆瓣老油(トウバンラオユ)や発酵した泡菜を唐辛子と油に漬け込んだ泡椒老油(パオジャオラオユ)といった香辛料があります。赤い油なのでラー油と似ていますが、香辛料を使っていて別物なんですね」 | ||||||||||||||||||
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作っていただいたのも当然新派の料理だ。乾焼吉次(ガヌサオチイツウ)は中国料理でポピュラーな魚の蒸し物に四川風のタレをからめたもの。 「泡菜と唐辛子を乳酸菌で発酵させた泡椒辣を調味料に使うんですね。ピクルスのような感じですが、ピクルスとは違い、調味料として使います」 柔らかい魚の肉に挽肉のピリ辛タレがからまって、魚料理ながらパンチのある料理だ。黒酢の酸味がするりと味をまとめている。じんわりする辛味を残しつつも後味はさっぱり。何段階にも味が分かれていて、舌に楽しい。 酒の肴に抜群なのが香辣鵁(部首が文、作りは鳥)軟骨(シャンラーチイロワングォー)だ。可愛らしく楊枝に刺した軟骨と銀杏をさっくりと油で揚げ、唐辛子と青山椒、葉ニンニクを絡めたもの。四川産という珍しい青山椒の“麻”が実にさわやか。そして辛い!香辛料の香りが食欲を直撃、手が止まらなくなる。どちらもパッと見はシンプルな料理に見えるが、手が込んでいる。他の店では味わえない、スパイシーな味だ。これほど香辛料の香りが開いた中華料理は初めていただいた。 「香辛料の種類は同じなんですが、香りの出し方や使い方が違うんでしょうね。ただ入れればいいわけじゃない。油に香りを移したり、いろいろある」 | ||||||||||||||||||
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1977年のオープン以来、龍の子は本格四川料理の店として愛されてきた。 「昔来ていた方がお子様を連れて来られたりね。ただ店を開いた頃は今ほど辛い料理が知られていなかったものですから、最初は弱めにして徐々に辛くしましたね」 今までも四川の本場には材料や知識の仕入れに何度も足を運んでいたが、料理人として向こうの店に入ることはできなかった。「最初は食べ歩きだけで厨房にはは入れませんでしたね。素通りするだけ」 ところがここ数年は付き合いのある物産会社の紹介で四川も有名店で研修を行えるようになった。 「本格的に行ったのはおととしからですね。四川にある『菜根香』という店で研修しています。料理学校もなさっている卞氏という方が経営されている有名な店です。向こうでは習うことは習って、日本で流行っているお料理や自分たちの料理を出しています。交流ですね。向こうのやり方を見て、ああこういうやり方もあるんだなあと勉強になります」 最近は四川でも辛さがマイルドになっているそうだ。「今は若い人の時代ですから、強烈に辛いものはなくなっています。若い人があまり辛い料理が好きじゃないんですね」現地では料理に合わせて白酒(蒸留酒で度数が高い)そうだが、日本ではもちろん紹興酒。紹興酒と辛い料理はよく合うと安川氏も太鼓判だ。 | ||||||||||||||||||
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