中国酒の種類と分類

中国酒の種類と分類についてご紹介します。

白酒と黄酒

蒸留酒の「白酒」と、醸造酒の「黄酒」

中国は広大な国。酒もさまざまな地域でさまざまに個性豊かな味わいが生まれました。なかでも代表的なのが「白酒(ぱいちゅう)」と「黄酒(ほわんちゅう)」。前者は日本の焼酎に相当し、東北、華北などの地域では高粱(こうりゃん)を主原料にしているため、別名「高粱酒」「白乾児(ぱいかる)」と呼ばれています。以前は中国独特の固体発酵という伝統的な製法でつくられてきましたが、解放後の急激な人口増加に伴う食糧不足から、切り干し甘藷原料の液体発酵法による白酒も登場しました。

一方、黄酒は穀物を麹で糖化して醸す酒。おもに長江南部の浙江省、江蘇省、福建省、江西省、上海など20省3自治区ほどの幅広い地域でつくられています。そのうち紹興を擁する浙江省では全国の約50%を生産※するほど。そして醸造酒といえば日本酒も同様。漢民族の手によって生まれた酒が海を渡って独自の進化を遂げたものといわれています。漢字にしろ、酒にしろ、わが国と中国のつながりの深さを感じずにはいられません。

「黄土に生まれた酒」(花井四郎 著/東方選書 1992年発行)より。

乾いた土地に高粱あれば、肥沃な土地に糯米あり

その土地によって醸される中国酒

文化は土地に根ざすもの。もちろん中国酒だって地の利を得て発展したことは言うまでもありません。白酒の代表的な原料である高粱は、もともとは熱帯原産といわれるものの、乾燥に強い植物であるため米や小麦が育たない地域での栽培が盛んになりました。

対して黄酒の原料は米。紹興酒を醸す糯米(浙江省、江南省、福建省など)をはじめ、黍米(きびまい=粘黄米や糯小米とも呼ばれ日本の粟に相当。山東省、華北一帯)、粳米(うるちまい=江蘇省、福建省の一部、東北地方)を使ったものがあります。また、酒づくりでもうひとつ大切なのが麹のはたらき。原料の糯米に含まれるデンプンを分解して酵母が利用できるブドウ糖に変え、さらにタンパク質に作用して酒の旨味や香りを左右する重要な役割を担います。中国では餅麹(へいきく)と呼ばれ、生の小麦を破砕し水や薬草で練ってレンガ状に固めたものを使用。紹興酒づくりの話題によく出てくるクモノスカビなどをつくり出します。

ちなみにクモノスカビといってもクモノスのカビではなく、菌糸がクモの糸のように縦横に絡む様子から付けられた名前。紹興酒の長年にわたる貯蔵風景を見て勘違いするケースも多いのでご注意を。それにしても、麹に繁殖するカビや酵母などの微生物は自然界に生息するものであり、製麹する場所によっても変わり、また同種であっても酵素力の強さや香気成分の生成能の違いも作用してくることから、ひとくちに黄酒といっても味わいはまさに千差万別。これが中国酒の大きな楽しみのひとつでもあります。

黄酒の代表といえば紹興酒

浙江省紹興市で醸された黄酒が紹興酒の厳密な定義。なのに台湾紹興酒なるものが実際に存在するとおり、その名声は確固たる地位を築いています。しかし、紹興酒の名は知っていても、さまざまな種類があることまではご存じないかもしれません。じつは大まかに4つの種類があります。

いちばんオーソドックスな製法で醸すのが元紅酒(げんこうしゅ)。日本で多く飲まれている紹興酒は加飯酒(かはんしゅ)と呼ばれ、糯米と麦麹を元紅酒より約10%ほど増量して仕込んだもの。発酵期間も元紅酒より長くとります。さらに仕込み水の代わりに元紅酒を使って濃醇に醸すのが善醸酒(ぜんじょうしゅ)。元紅酒の醪に麦麹を追加したうえに粕取焼酒の「糟焼(ツァオシャオ)」を添加してつくる甘いリキュールタイプの香雪酒(こうせつしゅ)があります。

よく紹興酒のラベルで目にする花彫酒(はなほりしゅ)とは、女児が産まれた家が誕生とともに黄酒をつくり、成長した際に美しく彫刻したカメを嫁入り道具として持たせた旧習から、子供が育つほど長く寝かせた酒という意味の表現。厳密には紹興酒の種類ではありません。そんな中でも加飯酒の人気が高いのは、食事と一緒に楽しむのにぴったりだから。濃厚な中国料理に、すっきりとした口当たりながら奥深い味わいの紹興酒は、まさにグッドパートナーなのです。

貯蔵年数ごとに個性がきらめく紹興酒

世界に冠たる食文化を誇る中国。なかでも紹興酒は食事との相性が抜群のお酒ですが、寝かせた年数によって個性もさまざま。「酒の肴」でなく、「肴の酒」として味わえる紹興酒。タイプに合わせて飲みくらべてみるのも一興です。

3年

陳年の称号は3年以上寝かせたものから。紹興酒の中ではもっとも若い部類になり、そのぶんフレッシュでアルコール感や酸味が強く、力強い味わいです。スパイスを使った刺激的な料理によく合います。

5年

フレッシュな中にも若干丸みが出てきながら、まだまだ力強さがセールスポイント。四川料理などの辛い料理や油を使った料理にマッチします。

8年

この年頃になると、とがった酸味が影を潜め、ほのかな甘みを残しつつ奥に秘めた力強さを感じるバランスのとれた味わいに。発酵調味料である醤油をベースにした料理などと好相性です。

10年

年を重ねてアルコール感のカドが取れ、酸味やほのかな甘み、力強さのバランスがほどよくなってきます。醤油ベースの料理や、鶏、魚の蒸し料理、あんかけ料理などとよく合います。

15年

やわらかな飲み口に仕上がり、すでにアルコール感は抜け、落ち着いた酸味や甘みが渾然一体となって複雑なうまさを醸し出します。素材そのものの味を楽しむ料理にはぜひとも合わせたいところ。

20年以上

熟成を重ねていくと、色は淡く、香りは中国で「チーシャン(酉へんに旨い香り)」と呼ばれるように軽くなり、味もほどよく枯れてきます。40年、50年ものとなると、まさに仙人の酒を飲むような恍惚とした味わいに出会えるでしょう。宴の終盤に名残を惜しみつつ...。

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